遺産を無償で使用している場合、基本的には特別受益に該当する可能性が高いですが、遺産である不動産において、被相続人と同居している場合には特別受益とは評価されないことが普通です。
特別受益とは、相続人の中に、被相続人による遺贈や贈与によって特別に利得を得た人がいる場合に、その受益分をその人の遺産相続分から差し引くべきであるという考え方です。
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不動産などの被相続人の財産を無償で使用させてもらっている場合、本来支払うべきである費用の支払を免れているのですから、それを特別受益と評価することができます。
たとえば、父親が、自分が所有している不動産を息子に無償で貸して、息子がその不動産内で事業経営をしていた場合や、父親が所有するアパートに娘を無償で住まわせていた場合などには、生計の資本としての贈与に該当して特別受益になると判断された事例があります。(東京地裁平15.11.17)。
これに対し、相続人が実家で被相続人と同居しており、その間被相続人に対して賃料を支払っていなかったというケースでは、特別受益にはならないという考え方が通例です。この場合、被相続人は本来得られるはずの賃料を得られなくなっているわけでもないので損失はありませんし、生計の資本としての贈与とはいえないと考えられるからです(大阪家裁平6.11.2など)。